年々、お正月らしさが薄れ、街も人も自分の気持ちも賑やかだったあの昭和のお正月感が懐かしく思える。

普段の日々とかわらない新年だが、今年も元旦は日向薬師へ初詣にでかけた。

電車とバスを乗り継ぎ、1時間30分ほどで参道入口まで辿りつき、そしてさらに山を登る。急な階段を上って山にはいると日向薬師の山門(仁王門)が建つ。ここをくぐり抜けると急こう配の山道、参道が続く。ひたすら登ると日向薬師の境内が現れる。

山と青空をバッグにひっそりとたたずむ茅葺屋根の本堂。清々しくもおおらかな気分に包まれて「今年も来てよかった~」と思う。毎年そうなのだ。

本堂の前で線香の煙を浴び、心と身体を清める。薬師如来に手を合わせ、家族や友人たちの健康と安全を祈願。新しいをお札を受け取る。

コロナのせいなのか、時間帯なのか、いつもの年より参拝者は少ない。

今年もお坊さんの法話はなかった。元旦はここ日向薬師法話を聞き、自分の生活態度を整え、1年を健康におくるための心構えにしていたので、新型コロナウィルス感染予防のためとはいえ、今年も法話が中止になり残念だ。

お寺にはいつも法話をしてくだる高野山の僧侶、宮島基行師の姿があった。声をかけ、新年のあいさつをした。

「元旦に聞く法話が1年を生活するための指針になるんですよ」と、法話が聞けない残念な気持ちを伝えると、2023年の年回りを書いた印刷物を渡してくれた。

以前、宮島さんと一緒に法話をしてくれた田村僧侶のことを尋ねると、2年前に亡くなったとのことだった。ここ数年、お正月に姿がなく体調がすぐれないと聞いていたので心配していた。ご冥福をお祈りします。

田村さんの法話はとても具体的でわかりやすく、すぐ実行できることばかりだった。
「今年は〇〇の年だから、カラダの◎◎に注意しなさい。食べ物は農薬を使わない◎◎な野菜を食べなさい。」などと、普段の生活で簡単に実践できることを熱く語っていたことが思い出される。

三日坊主で忘れてしまう自分でも、ピンチのときやメンタルが弱っているときには田村さんの年頭のアドバイスを思い出し、勇気づけられていた。

長引く新型コロナウィルス感染症が終息に向かい、日向薬師で聞く新年の法話が再開される日を待ち望む2023年の初詣だった。

日向薬師と法話。元旦の初詣