2023年1月31日。
子どもの頃から馴染みのあった百貨店『藤丸』が122年の幕を閉じた。
北海道帯広市民にとって『藤丸』は、新宿界隈の住民にとっての『伊勢丹』のような地元ご贔屓の百貨店である。
藤丸百貨店の個人的な思い出は毎年恒例のお正月の福袋だ。
当時の初売りは確か4日か5日だと記憶している。福袋を求めて藤丸の初売りにやって来る大勢の人をかき分けて福袋をやっと手に入れていた。いまほどモノが豊富な時代じゃないから価格以上の商品が入っていれば福袋の中は何でもかまわない。縁起物の福袋を開ける楽しみと、入っていたものを取り出してお年玉をもらったように喜んでいた家族の姿を今は懐かしく思う。
もうひとつの『藤丸』の思い出は小さい子どもの頃、催事で賑わう屋上で迷子になったこと。いまでもときどき鮮明に思い出すことがある。視界に大人たちの足しか見えない。隣には親も知り合いもいない。探そうにも群衆の中で身動きもとれない。途方に暮れて絶望を初めて味わったのも『藤丸』である。
百貨店が生き生きしていたその頃が嘘のように時代は大きく変わった。さらに変化を続けている。
閉店が決まってから『藤丸』の創業が1900年だったことを知った。
122年の歴史がある老舗である。手元にある古い絵葉書から帯広市街のものを探したら、昭和10年消印の広小路を撮影したものがあった。テントの屋台村の先の西2条通りに立派な建物の『藤丸』が写っている。1930年代の写真である。
さて、伊勢丹的存在がなくなってしまった帯広の街はこの先どう変わっていくのだろうか?
期待と不安があるけれど、先人たちの築いてきた古き良き北国の文化が継承進化していく未来を楽しみにしたい。
創業122年の藤丸百貨店@北海道帯広市 1930年代絵葉書より