建築家、ル・コルビュジエを知ったのは1989年。乃木坂のTOTOギャラリーで開催されていた安藤忠雄氏の展覧会「建築の地平 水の教会 光の教会」を観たときでした。安藤忠雄が大きな影響を受けた人物、それがル・コルビュジエと知り、彼の設計した建築物に興味を持ちました。

先日、上野公園にある国立西洋美術館の開館60周年を記念して開催されている展覧会『ル・コルビュジエ/絵画から建築へ―ピュリスムの時代』へ行ってきました。

コルビュジエの設計した建物(国立西洋美術館・本館)でコルビュジエを観る。なかなか趣深い体験でした。しかも、今まで知らなかった画家だった時代のコルビュジェです。彼の考え方や生き方の基本を感じることができました。(これも優秀な音声ガイドのおかげ。ありがとう!)

で、今回の展覧会で知ったり感じたりしたことです。

★コルビュジエの設計した建物でコルビュジエの絵画や建築模型を観るのは大きな寛ぎを感じる。

★コルビュジエは画家だった。画家時代の名前は シャルル=エドゥアール・ジャンヌレと名乗っていた。

★フランス1920年代に「ピュリスム運動」っていうのがあった。画家のアメデ・オザンファンとシャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(のちのル・コルビュジエ)の二人が取り組んでいた絵画運動である。

★「ピュリスム」と「キュビスム」の違いが何となくわかった。

抽象的で何が描いてあるかわかりづらいピカソの絵画に代表されるキュビスム。そんな主観主義的絵画を批判するかたちであらわれたのがピュリスム。見たものを純化し幾何学的に画面構成する純粋主義という考え方。ガラス瓶とかグラスとかギターとか洗練されたデザインの身近な生活用品をモチーフに、幾何学的に画面構成されて描かれたのがピュリスムの絵画って感じでしょうか。

★オザンファンとジャンヌレ(のちのル・コルビュジエ)の2人はピュリスム運動を広げるために『レスプリ・ヌーヴォー』っていう総合芸術誌を作った。本の展示も多数。時代を経ても色あせない心奪われるデザイン。

★ピュリスムの絵画運動はパッとしなかったが、その後、建築家になったコルビュジエの設計にピュリスムの考え方が活きていた。

★コルビュジエは「モデュロール」という自分の尺度を作り、設計に使っていた。モデュロールというのはフランス語の「寸法」と「黄金比」をつなげた造語。「人は自分に合った大きさの家に住み、身の丈に合った生活をするもの」という彼の考え方から生まれた。

★コルビュジエは生涯、絵を愛し、絵を描き続けた。

さて、コルビュジエが設計した国立西洋美術館。作品や模型を観る合間にところどころでコルビュジエの建築空間をしみじみ見渡します。2.4メートルと4メートルの2種類の天井の組み合わせ。天井からの光や照明が作り出す幾何学的な影や明暗のコントラスト。まるで木陰のある小さな庭のベンチに腰掛けて日向ぼっこするような居心地の良さを感じます。幾何学的な回廊を移動しながら変化する景色も楽しめます。気持ちの良い体験でした。

ミュージアムショップに立ち寄って彼の著書「小さな家」(日本語版)を買いました。

コルビュジエが両親のために設計し建てた50数平方メートルの小さな家。自然が身近にある住まい。ミニマリズムと開放感が両立したシンプルな家。

わが家ではときどき「小さな家」のことが話題に上ります。「猫1匹と人間2人の生活。小さな家の間取りが理想だよね」と。

美術館を出ると頭がスッキリしていました。

少しだけ自分の生き方に変化があったような気がします。

*展覧会『ル・コルビュジエ/絵画から建築へ―ピュリスムの時代』の会期は2019年5月19日(日)まで。

ル・コルビュジエ「絵画から建築へ―ピュリスムの時代」の展覧会